観音経 その10
  
  妙法蓮華経觀世音菩薩普門品第二十五
  (みょうほうれげきょうかんぜおんぼさつふもんぼんだいにじゅうご)

  爾時無盡意菩薩(にじむじんにぼさ)
  以偈問白(いげもんわつ)
  世尊妙相具(せそんみょうそうぐ)
  我今重問彼(がこんじゅうもんぴ)
  佛子何因縁(ぶっしがいんねん)
  名為觀世音(みょういかんぜおん)
  具足妙相尊(ぐそくみょうそうそん)
  偈答無盡意(げとうむじんに)
  汝聴觀音行(にょちょうかんのんぎょう)
  善應諸方所(ぜんのうしょほうしょ)
  弘誓深如海(ぐぜいしんにょかい)
  歴劫不思議(りゃくこうふしぎ)
  侍多千億佛(じたせんのくぶつ)
  發大清浄願(ほつだいしょうじょうがん)
  我為汝畧説(がいにょりゃくせつ)
  聞名及見身(もんみょうぎゅうけんしん)
  心念不空過(しんねんふくうか)
  能滅諸有苦(のうめつしょうく)
  假使興害意(けしこうがいい)
  推落大火坑(すいらくいだいかきょう)
  火坑變成池(かきょうへんじょうち)
  或漂流巨海(わくひょうるこかい)
  龍魚諸鬼難(りゅうごしょきなん)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  波浪不能沒(はろうふのうもつ)
  或在須彌峯(わくざいしゅみぶ)
  為人所推堕(いにんしょすいだ)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  如日虚空住(にょにちこくうじゅう)
  或被惡人逐(わくひあくにんちく)
  堕落金剛山(だらくこんごうせん)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  不能損一毛(ふのうそんいちもう)
  或値怨賊繞(わくちおんぞくにょう)
  各執刀加害(かくしゅうとうかがい)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  咸即起慈心(げんそくきじしん)
  或遭王難苦(わくそうおうなんく)
  臨刑欲壽終(りんぎょうよくじゅしゅう)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  刀尋段段壊(とうじんだんだんね)
  或囚禁枷鎖(わくしゅうきんかさ)
  手足被○械(しゅそくひちゅうかい)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  釋然得解脱(しゃくねんとくげだつ)
  呪詛諸毒薬(しゅそしょどくやく)
  所欲害身者(しゅよくがいしんじゃ)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  還着於本人(げんじゃくおほんにん)
  或遇惡羅刹(わくぐうあくらせつ)
  毒龍諸鬼等(どくりゅうしょきとう)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  時悉不敢害(じしつぶかんがい)
  若惡獣圍繞(にゃくあくじゅういにょう)
  利牙爪可怖(りげそうかふ)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  疾走無邉方(しっそうむへんぽう)
  ○蛇及蝮蠍(がんじゃふくかつ)
  氣毒煙火然(けどくえんかねん)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  尋聲自廻去(じんじょうじえこ)
  雲雷鼓掣電(うんらいくせいでん)
  降雹樹大雨(ごうばくじゅだいう)
  念彼觀音力(ねんぴかんのんりき)
  應時得消散(おうじとくしょうさん)
  


  (和訳)

  その時に無尽意菩薩、偈を以って問うて曰く。
  世尊は妙相を具えたもう。
  我今重ねて彼に問いたてまつる。
  仏子何の因縁ありて名づけて観世音と為すや。
  妙相を具足したまえる尊、
  偈を以って無尽意に答えたもう。
  汝観音の行を聴け。
  善く諸々の方所に応ず。
  弘誓の深きこと海の如く、
  劫を歴ども思議せられず。
  多く千億の仏に侍えて、
  大清浄の願を発したもう。
  我れ汝の為に略して説かん。
  名を聞き及び身を見たてまつり、
  心に念じて空しく過ごさざれば、
  あらゆる苦しみを能く滅せん。
  仮使害意を興して、
  大いなる火坑に推し落とされんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  火坑変じて池とならん。
  或いは巨海に漂流して、
  龍魚諸鬼の難あらんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  波浪も没すること能わず。
  或いは須弥の峰に在りて、
  人の為に押し堕されんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  日の如く虚空に住せん。
  或いは悪人に逐われて、
  金剛山より堕落せんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  一毛も損すること能わず。
  或いは怨賊にかこまれ、
  各々刀を執って害を加えんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  皆即ち慈心を起さん。
  或いは王難の苦に遭うて、
  刑せらるるに臨んで寿を終わらんとせんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  刀尋で段々に折れん。
  或いは囚われて枷鎖に禁ぜられ、
  手足にちゅう械を被せられんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  釈然として解脱することを得ん。
  呪詛や諸々の毒薬に、
  身を害せんとせられん者、
  彼の観音の力を念ずれば、
  還って本人に着きなん。
  或は悪羅刹、
  毒龍諸鬼等
  彼の観音の力を念ずれば、
  時に悉く敢えて害せじ。
  若し悪獣に圍繞せられて
  利き牙と爪の恐ろべきも、
  彼の観音の力を念ずれば、
  疾く無辺の方に走らん。
  ○蛇及び蝮蠍の、
  気毒が煙火と燃ゆる時、
  彼の観音の力を念ずれば、
  声に尋いで自ら廻り去らん。
  雲雷鼓して雷を掣き、
  雹を降らし大雨を廚がんに、
  彼の観音の力を念ずれば、
  時に応じて消え散るを得ん。




  (解説)

   偈の部分になりました。
   ようするに詩です。
   本や映画やCDやDVDのない時代
   詩人は偉大な芸術家でした。
   観音さまのすばらしさも
   より簡潔にドラマチックに伝えられます。
   
   ここでは十二の難からの救いは

   @火
   A水
   B須弥山から落とされる
   C金剛山から落とされる
   D賊
   E無謀な王
   F囚われる
   Gのろいや毒薬
   H食人鬼
   I悪獣
   J毒蛇、むかで、さそり
   K雷、雹(ひょう)、大雨

   となります。

   


  (現代語訳)

   その時に無尽意菩薩は
   偈(げ)でお釈迦さまにたずねました。
   「お釈迦さまは、われわれとは違う
   妙なる姿をしていらっしゃいます。
   私はもう一度お釈迦さまに聞こうとおもうんです。
   観世音菩薩、観音さまは
   どうして観音さまというのでしょうか?」
  
   そんなすばらしいお釈迦さまは
   無尽意に偈(げ)でお答えします。
   「おまえさん、観音さまのすばらしさを聞くがよい。
   それはどんなところでも変わらず応えてくれる。
   観音さまの衆生救済の願いの深さは大海のようだ。
   どんなに長い間考えたところで、及びもつかない。
   きりがない程の尊者のもとで修行をし、
   すべての衆生を救うまで自分は成仏しないという
   ほんとうに清らかな願いをおこしたのじゃ。」

   「私は今ふたたびお前さんに話そう。
   観音さまの名前をきき
   観音さまの姿をみて
   一心に念じることができれば
   そのことだけでいろいろな苦しみから自由になれる。」

   「たとえ悪人が悪いこころをおこし
   火の穴におとされても
   観音さまを念じれば
   火の穴は池になる。」
  
   「大海に漂流し
   悪い龍や食人鬼に取り囲まれても
   観音さまを念じれば
   波に飲まれてしまうような事はない。」

   「もし須弥山で
   人につき落とされても
   観音さまを念じれば
   お日様のように空中にただよい無事だ。」

   「もし悪人に追われて
   金剛山から落っこちても
   観音さまを念じれば
   髪の毛一本すら傷つかない。」

   「賊に囲まれて
   刀で脅されても
   観音さまを念じれば
   なんと賊は慈悲のこころを起こすんだ」

   「もし王の圧制で
   処刑されるような事があったとしても
   観音さまを念じれば
   その処刑に使う刀すら壊れてしまう。」

   「囚われて
   手かせ足かせをはめられたとしても
   観音さまを念じれば
   ゆうゆうと脱出できる。」

   「のろいをかけられたり
   毒をもられたとしても
   被害者が観音さまを念じれば
   加害者に矛先がかわる。」

   「食人鬼や悪龍や鬼に
   かこまれたとしても
   観音さまを念じれば
   これらは害を加えようとはしない。」

   「もし悪獣に襲われ
   牙や爪が恐ろしくても
   観音さまを念じれば
   彼方へ走っていってしまう。」

   「いもり、へび、むかで、さそりが
   襲いかかってこようとも
   観音さまを念じれば
   勝手に逃げていく。」

   「かみなり雲が
   かみなりを落とし、ヒョウを降らせ、大雨をふらせても
   観音さまを念じれば
   だんだんと晴れてくる。」

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